Vol.50(2026年3月)
山下 晃平
(美学、芸術学)

「感性化」を通じて、創造のための場を提供したい

山下先生の専門分野は何ですか?

 私の専門は美学・芸術学という分野で、主な研究というのは最近だと、近現代の美術を扱った「展覧会史研究」というのがあるのですが、その研究を軸にしながら「日常美学」や「日本文化論」という視点とを交叉させる・かけ合わせるという研究をしています。ですから、作家・作品論とは少し異なる視点で研究をしているところです。
 もう少し付け加えると、現代では芸術表現が行われている場所がさまざまですので、そういういろんな展覧会や美術展という現場をリサーチしたり赴いたりする一方で、人の感性に関する理論的研究を行っています。

美学的な研究をしようと思ったきっかけは何ですか?

 私は純粋に小さいころから絵は好きだったんですよね。結構、人気のある定番の絵だとか、たとえば十七世紀のフランドル絵画でありますとか西洋美術の芸術家たちの優れた技術や作品を見て味わうのが好きだったんです。
 そういう展覧会などに行っているうちに、最近の展覧会になると展示空間が変わってきているなと感じたんですよね。そこから芸術家・芸術作品・鑑賞者という三者関係のあり方という、美術のおかれている環境の方に興味を持つようになりました。それを掘り下げていくと、芸術とそれを見る私たち主体との関係、それは美学、すなわち感性論に関わってくるのですが、そのような関係を探るためにはどういった視点があるのか、これまでどんな研究者がいたのかといったことを探求したくなって、美学の道に入っていったというところがありますね。

 

ご著書
『芸術と社会 表現の自由と倫理の相克』
(加須屋明子編、共著、中央公論美術出版、2024年)

なぜ大学の講師になろうと思われたのですか?

 やはり芸術への関心ですよね。これがずっともう子供のころからあったんだと思います。
 一度、私もデザイン業界に就職したんです。デザイン業界も一つのクリエイティブな世界ではあったんですが、そういう世界にいるとさまざまなアーティストもいるわけです。そういった出会いの中で20代30代に自分の中にある芸術への探究心、デザインの経験を活かして芸術にかかわり、貢献したいという気持ちがだんだんと強くなって、やはり研究の道にもう一回戻って進んでみようかと思ったわけです。そうしたら美学的な論文や本の出版にも至りましたが、その流れで芸術界に貢献していけないか、と思いながら今に至っているということです。

今年から始まるゼミではこんなことをしたい!こんな学生に来てほしいみたいな展望はありますか?

 美学・芸術学のゼミなので、言うなれば感性的な認識の学問になるんですよね。文化政策・経済・デザインといったさまざまな研究があるなかで、この学問の要は理論研究や知覚の探究という要素が軸にあるんですね。だから、自分と他者や周囲の対象との関わり合いを探ることに学問的な発見があると考えていますので、入ってきたゼミの学生さんとは、自分を取り巻く環境や空間を見つめていく姿勢を一緒に考えていきたいと思います。それからゼミでは、ぜひお互いの考えを伝えあって高めあう、クリエイティブな、言わば創造のための場を提供していきたいなと思います。

 

画家としての山下先生
《晴れた日に》油彩、カンヴァス、2024年。
(162cm × 130.3cm)

最後に学生に対するコメントをお願いします

 そうですね、私がいま注目している「日常美学」の中に、日常にある「ルーティンの美学」とか、「雰囲気の美学」という言葉があるんです。そういう言葉があるように日々の暮らしをなんとなくで終えるのではなくて、その日常のさまざまな空間と自分の感性とがどう関わっているのか。たとえば家だったり部屋だったり、自分が大学の中で過ごしている空間。あるいは通学路や自分が住んでいる町そのものといった環境が自分とどんな風に繋がっているのかということを意識して、気づいてほしいと考えています。そのような姿勢を「感性化」するというのですが、そのことを少し考えてもらうと、かけがえのない日常生活というものに自分なりのさまざまな見え方や新しい考え方が沸き起こってくるんじゃないかと思います。

取材・文/三輪 大智

取材後の感想

自分自身も、もともと美術が好きなので何度か山下先生の授業を受けたことがありましたが、授業の中でも美術が好きなことがよく伝わる先生でした。インタビューでは美術に対する深い思いや美学への探究心について聞くことができ、やっぱり本当に美術が好きな人なんだなと強く思いました。美術が好きな人、学んでみたいと思う人には是非お勧めしたい先生なので、ゼミや授業を受けてみてください!!
<三輪 大智>

山下 晃平 プロフィール

2002年
京都府立大学 文学部 日本・中国文学科

2012年 
京都市立芸術大学大学院 美術研究科芸術学専攻

2016年 
京都市立芸術大学大学院 美術研究科美術専攻芸術学領域

2002年〜2005年
株式会社DNPメディアクリエイト関西企画制作

2016年〜2025年
京都市立芸術大学 美術学部 非常勤講師

2019年〜2024年
京都市立芸術大学 芸術資源研究センター 客員研究員

2025年〜現在
神戸学院大学 人文学部 講師