2018年2月号

サッカーで世界を変えられる! 本気でそう信じて走ってきた

挫折の連続から、大学2年次に スポーツビジネスの存在を知り、 3年次に実際に
スポーツイベントの 企画・運営体験をきっかけに 将来の方向性を決める。 卒業後は三度の転職を繰り返す中で、 軸をぶらさずにキャリアアップ。 現在、東京ヴェルディで 夢を叶えて活躍している 佐川さんから、 就活を考えている在校生向けに 話を聞いた。
(取材・文/新谷正子)

Profile

1987年生まれ。2009年大学卒業 後、神戸のITベンチャーへ新卒入 社。リーマンショックの影響を受け、 会社の経営悪化に伴い退職。 IT企 業へ転職し、営業として勤務しなが ら、スポーツに特化したNPO法人を 設立。2013年、株式会社リクルート キャリアに転職し、リクルーティング アドバイザーとして、大阪の中小企業 の中途採用をサポート。2017年7月、 東京ヴェルディ株式会社へ転職し、 スポンサー営業、学生マネジメント、 試合運営などを担当。現在に至る。

 

大学3年次に人生の転機。 スポーツビジネスを仕事に!

高校時代は、挫折の連続で荒れていたという佐川諒さん。しかし、先生との約束で無遅刻・無欠席で、神戸学院大学の推薦をもらい進学した。
大学生時代は、1・2年次の時に単位をすべて取得。クラブ活動は、サッカーサークルなど4つに所属。アルバイトは、ホームセンターやイベントスタッフとして仕事をしていた。
そして大学2年次に受講した神戸学院大学×ヴィッセル神戸のキャリア形成講義で、スポーツビジネスの存在を知り興味をもつ。
「今まではプレーすること以外、サッカーの仕事について考えたことはなかったのですが、初めてそこで裏方でビジネスとしてサッカーを支える仕事があることを知りました」

そして大学3年次に、ヴィッセル神戸が運営する大学生を対象にしたヴィッセルカレッジに入学する。ヴィッセルカレッジとは、クラブスタッフを始めオフィシャルスポンサー企業やヴィッセル神戸に関わる業界人を講師として招いて講義を行うほか、学生同士が刺激しあいながらイベントの企画・運営を行うというものだ。ここで将来の方向を「スポーツビジネス」に決めたといっていい。
また3年次には、スマトラ沖地震で被害を受けたインドネシアに渡って子供たちにサッカーボールをプレゼントし、サッカー教室を開催した。4年次は、カンボジアに渡り、小学校で一緒にサッカー教室を行ったりした。
こうした大学時代を振り返り、「オープンなコミュニケーション力、フットワークの軽さ、初動の速さ、目標設定し実現に向けて行動できる力を身につけられました」と語る。

大学3年次、スマトラ沖地震で被害にあった地域にスポーツ用品を届けるためにインドネシアへ

 

大学4年次にカンボジアへ。小学校で運動会を開催する

リクルート時代に本気で働く楽しさを知る

大学卒業後に入社した会社が、ITで地域とスポーツをつなげる会社で、Webページを作っていた。しかしリーマンショックに見舞われ、わずか75日で給料が未払いになり、会社を辞めざるを得なかった。
「幸せレベルの最底辺を味わいました。でもどんな環境でも生きていける、最強のメンタルだけは手に入れたかもしれません」
次に、IT企業に転職し、システムエンジニアの開発案件に携わる仕事に就く。驚くべきは、営業として勤務しながら、スポーツに特化したNPO法人を設立し、パラレルキャリアとして仕事を両立させたことだ。平日の午後6時までは会社員、午後6時以降と土日祝は、NPO法人GIFT副代表として活動していた。
ここで社会人の基本的スキルと営業経験、初対面の方との会話スキルを身につけ、NPO法人の活動を通して、マネジメント経験と新規事業の立案・遂行、爆発的な人脈拡大をしたという。
そして、8つのサッカーチームに飛び込みで転職活動をしたが、まだまだ自分が普通の人だと気づき、株式会社リクルートキャリア(以下、リクルート)に転職した。

 

リクルート時代、全社表彰された際に、2000名程の社員に向けてプレゼンした

リクルート時代は、リクルーティングアドバイザーとして、大阪の中小企業200社の中途採用をサポート。また、新卒領域で関西圏の大学生への就職ガイダンスなどのキャリア支援も担当。2015年、全国表彰で「VISION MISSION AWARD」を受賞した。
だが、決して平坦な道ばかりではなかった。2000人の前でプレゼンをして優勝した経験から天狗になり、業績が悪くなった時期もあった。
そのとき上司に、「誰からお金を頂いていて、誰のために仕事をしているのか」と言われて、ハッとした。そこからは目の前のお客様を幸せにすることを考えて仕事をした。あるお客様のことを思い出す。
「クレームから始まった関係性だったのですが、採用制度や女性の働きやすい環境づくりなど、本気でお客様に提案することで、会社全体を変えることができたのです。最終的に、お客様から『うちの本当のパートナーは貴方だ』と涙を流しながら言っていただけた。私も一緒に泣きました」

また、転職支援をする仕事の中で、1年未満など早期離職をする人の傾向として、大学時代の就職活動のタイミングや準備不足が影響していることに気がつき、大学への講演会やキャリア支援を始めた。今回の神戸学院大学での講演会もその一環である。
リクルート時代に一番身についたことは、仕事に対するスタンス。「本気で働く楽しさ」だと言う。

社会人時代。カンボジアでのサッカー大会を企画運営。本物の日本代表の試合のような演出 (ユニフォーム、スタジアム、音響、マスコミ)を用意し、現地の孤児院の子ども達700名ほどを招待して行う

 

社会人時代のカンボジア写真。オフの日には小学校や孤児院を訪問し、サッカー教室など も実施

 

 

選手の引退後のキャリアアップを支援していきたい

2017年7月、選手の引退後のキャリアを支援したいという気持ちから東京ヴェルディ株式会社に転職した。前身のヴェルディ川崎は、三浦知良、ラモス瑠偉らを擁し、初代Jリーグ年間王者に輝いた名門チームである。いま東京ヴェルディは、Jリーグの東京ヴェルディ、女子サッカーの日テレ・ベレーザをはじめ、トライアスロン、バレーボールなど幅広くスポーツビジネスに関わっている。

いま佐川さんは、スポンサー営業と試合運営、学生インターンのマネジメントなどを担当。忙しくも充実の日々を送っている。

NPO法人GIFTは、女性向けサッカー教室、フットサル交流会を神戸と東京で 運営しており、年に1回神戸or東京で合同フットサル交流イベントを開催

 

東京ヴェルディで試合運営の準備中

 

選手のセカンドキャリア支援に関しては、「現在は構想段階ですが、選手が将来的にも輝ける環境を整えるチームをめざして、人材会社を巻き込みながらプロジェクトを進めていく予定です」と力強く語る。
最後に、佐川さんから後輩の皆さんへメッセージ。
①「今」を楽しもう!仲間を大切に!
②決めるのは結局自分!意思をもとう!
③社会に出れば学歴なんて関係ない!

 

さらに「やらないで後悔するより、やって後悔する方がいい。失敗していい年齢だから、チャレンジしてみること。自分のように失敗しないように、学生の間にいろんな企業を知る努力をしてください」といったアドバイスもいただいた。
在学中に将来の目標を決めて、大胆に挑戦を続けてきた佐川さんの言葉だけに説得力がある。

注)この記事は、2017年11月22日、中山・ 中村・金ゼミで行われた佐川諒氏講演会 「働く喜びを後輩のみなさんへ」をもとに追加取材を行い、再構成したものです。