2023年3月号
地元に貢献したいという気持ちが決め手でした。
大阪の北摂地域を中心に走る大阪モノレール。
今回大阪モノレールのフロアアテンダント(駅係員)として活躍している臼井良太さんにお話を伺った。
Profile
1995年、大阪府茨木市生まれ。大阪モノレールサービス株式会社駅事業部に勤務。
地元貢献がしたくて大阪モノレールへ
大阪モノレールは、1990年に開業。そして臼井さんが就職した大阪モノレールサービスは、大阪モノレールの駅業務を担っている。就職の決め手となったものは何なのか。
「もともと大阪府茨木市出身でして、地元に貢献したいという気持ちが強くありました。また自分の性格を考えたときに時間通りに動くということが得意であるということも大きいです。」
学生のころから大阪モノレールを利用し、地元貢献がしたいと強く考えていた臼井さん。地元大阪で就職先を探していたところ、地元と密接した大阪モノレールに感銘を受けた。もともと鉄道が好きだったというわけではなく、鉄道会社を受けたのは大阪モノレールのみだという。
「“鉄道”が好きなのではなく“大阪モノレールという会社”が好きなんです。」
また、時間通りの勤務体制は自分に向いていると笑顔で語った。
しかし入ってみると大変なことも多かったという。
「終電から始発までの間、駅って閉まるでしょ?駅係員が駅に泊まり込んで対応してるんです。泊まり勤務の時は、朝出勤して翌朝退勤するんで、まる一日働くことになります。」
大阪モノレールの駅係員の勤務体制は、日勤と泊まり勤務がある。泊まり勤務の日は24時間体制で勤務するため、慣れるまでに時間がかかったという。特に入社したての時期は、覚えることも多く大変だったとのこと。勤務中に仮眠時間はあるものの、睡眠バランスが崩れないよう体調管理には気を使う。しかし、不思議とストレスは感じないという。
「周りからはしんどくないの?と聞かれたりするんですが、僕自身この仕事が向いていると思うんです。それに、翌朝退勤した日は基本的にまる一日休みですし、勤務シフトの並びによっては公休が続くこともあるので、体感としては休みが多く感じるんです。」
想像とは違った駅係員の仕事
この仕事は自分に向いているという臼井さん。しかし入社直後は想像していた駅係員の仕事とは違っていたという。
「僕がイメージする駅係員は、駅の窓口内で仕事をするものと思っていました。でも、働いてみると、窓口以外の仕事も結構多いんです。例えば、お手伝いが必要なお客さまをホームまでご案内したり、電車の中のお忘れ物を探しに行ったりもします。正しい対応ができるように、知識も含めて接遇研修が充実しています。」
大阪モノレールでは、駅係員を“フロアアテンダント”と呼ぶ。この呼び名から、接遇に力を入れていることがわかる。今ではコンシェルジュなどがいる駅も増えてきたが、大阪モノレールがフロアアテンダントを駅に配置したのは、今から約20年前。全国的に見ても、駅での接遇面では先がけの存在である。接遇を学ぶ臼井さんに仕事でやりがいを感じる瞬間を聞いてみた。
「ご案内や落とし物の受け渡しなどで対応をした時に、お客さまから“ありがとう”と言っていただくことです。それが何よりうれしいです。」
臼井さんは入社後、「サービス介助士」という資格を取得しており、取得後は特に対応への意識が変わったという。大阪モノレールは、この資格を全ての駅係員が取得することを目標にしている。
地域に根差している大阪モノレールならではの取り組みとして「モノレール文庫」というものがある。家庭で読まなくなった本が寄贈され、お客さまに貸出しをするリユース方式で運営している。本の貸出しや返却の手続きが不要なうえ、無料で利用できる。また、絵画などを展示する「モノギャラリー」や、駅構内で飲食できるスペース「モノドリンク(ドリンクコーナー)」もあり、誰でも自由に利用(鑑賞)できることから、電車待ちの時間や待ち合わせ時間、通勤通学途中等に利用客が多い。
さらに、万博記念公園駅構内にある「イベント広場」では、ジャズコンサートや飲食店が立ち並ぶマルシェイベントを定期的に開催したり、イベント列車の実施、沿線のハイキング情報の提供等も盛んに行っている。駅係員もお客さまに沿線を楽しく巡っていただくためのスタンプラリーや絵馬祈願所の設置等を主体的に考えて開催する等、さらに地域と密接した鉄道会社を目指している。
新しいチャレンジも
臼井さんに今後の目標を聞いてみた。
「まずは駅係員として一人前になること。社員やお客さまから信頼されるフロアアテンダントになることを直近の目標にしています。」 現在、臼井さんが主に勤務している万博記念公園駅と千里中央駅は、大阪モノレールの中でも利用客の多い駅だという。特に休日の万博記念公園駅はかなり賑わう。近隣には、万博記念公園やサッカースタジアム、大きな商業施設があり、駅構内でのイベントも重なると一日中利用客の対応に追われるため、そういった事も課題になるという。
「学ぶことはまだまだたくさんあります。今後もいろんなことにチャレンジしたい。」
そして、今後は運転士にも挑戦したいという。かなり狭き門になるそうだが、そのための試験を頑張りたいとのことだ。
学部生へのメッセージ
臼井さんは「神戸学院大学でよかった」と満面の笑みで語った。
「僕自身、文学の勉強はすごく好きだったのですが、就職に役立つことってないんだろうなと思っていたんです。実際仕事に関係はしませんでした。大学時代に就職先で役に立つことを勉強することはとても大事だと思います。でも、ふと立ち止まって悩んだときに、一見何も役に立たないと思っていた文学が自分の中で大きな部分を占めているんです。今でも詩を読み返したりしていて、僕の場合、時間をしっかり作って詩や小説を読みたいんです。直接仕事に関係がなくても心の支えとなっていて、今までの勉強がすごく生きていると感じます。なので、皆さんも好きなことを思いっきりやって燃え尽きるぐらいのところまで行くと、いつかふとした時にそれが生きてきます。だからこそ学生の時に、好きなことを全力でやってほしいと思います。」
今後の臼井さんの活躍に期待したい。
取材後の感想
事前準備を自分なりにしたつもりでしたが、取材自体の経験がなかったために話を引き出し切れているか常に不安でした。自分の聞きたいことを伝える、相手の話したいことを引き出すというのはとても難しいことだと感じました。しかし取材を受けていただいた臼井さんがすごく協力的で、気さくに施設の案内や関連した話をたくさんしてくださってとても助かりました。
取材・文/岸川晃平