2025年度 大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ「秋の鳴く虫の夕べー虫の音の聞き分け講座ー」が行われました

川上靖教授の虫が鳴く理由や生態についてのお話
2025年9月24日(水)午後6時から明石市大蔵八幡町の「明石ハウス」にて、地域研究センターの主催する一般向け講演会『大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ2025』が実施されました。
今回は、人文学部の川上靖教授が「秋の鳴く虫の夕べー虫の音の聞き分け講座ー」と題し、鳴く虫の聞き分け方を中心に、虫が鳴く理由や生態についてのお話をお聞きしました
バッタ類の分類と進化を研究してきた川上先生は、博士号を取った際に「バッタ研究で博士号」という見出しで新聞に載ったそうです。そこで、「バッタもんではありません(笑)」とおどける楽しい自己紹介に、会場は笑いに包まれました。
「触覚が短かったらバッタです」
コオロギやキリギリスとバッタの違いは“触覚が短い”ことや、彼らが音を使ってコミュニケーションを取っていること、鳴くのはオスだけであることなどを説明する川上先生の話に、会場に集まった皆さんは熱心に耳を傾けていました。
特に、一番前に座っていた小学生の男の子は目を輝かせながら聞いていました。小さなお子さんだけではありません。幼少期に虫を捕まえて遊んだことを思い出したと語る参加者も、子どもの時に戻ったようなワクワクした表情で聞いておられました。

コオロギの耳の位置を説明する川上先生
一通りの説明が終わったところで、川上先生が質問をしました。
「コオロギの耳はどこにあるでしょうか?」
会場からは「触覚!」という声が上がりましたが、「惜しいな…!虫の気持ちになって考えてください」との返事に「う〜ん」と唸る参加者たち。
答えは…「実は前足に耳があるんです」。
その意外な耳の場所に、会場が湧きました。
そうしたやりとりを経て、この後のクイズで聞き分ける虫たちの音を一通り聴きました。高さによって聞こえてくる虫の音が違うことや、スズムシをオスだけ飼うと闘いの音になることなど、音に着目することで見えてくる虫の世界が広がっていく素敵な時間でした。

聞き分けクイズ、スタート!
いよいよ聞き分けクイズの始まりです。スピーカーで虫が鳴く音が流され、それがなんの虫の音かを当てていくクイズです。
1問目は、“鳴く虫の女王”とも呼ばれているカンタンの声から始まりました。その後次々と様々な虫の鳴く音が流され、参加者もその音に耳を澄ませます。
7問目にキリギリスが紹介された時に「安心のキリギリス!」と述べられた川上先生に、「ほんまそれ!」という小さく呟く方もいらっしゃいました。
クイズも最終段階に入り、クツワムシの鳴き声あたりで、誰もどの虫の声か全くわからなくなったタイミングで、川上先生は「やればやるほどわけがわからなくなるんです…」とニヤリ。
ニコニコしながら、「確実なのは捕まえることです」という結論を述べられた時、「えっ!聞き分けるんじゃなくて?!」と心の中でツッコミを入れた方もいらっしゃるかもしれません。
最後は、「コオロギ四種をマスターしよう!」ということで、身近で聞けるコオロギの聞き分けができるようになる方法が伝授されました。

会場からの質問
子どもから大人までみんなで「虫の聞き分けにみんなでチャレンジする」という試みに、終了後も活発な質疑応答が行われました。
最後に感想として、「一種の再会」の話が語られました。参加者が昔読んだ時代小説に、クサヒバリが鳴く音が出てきたというのです。
「これやったんかー、小説では音出てきませんので、初めて聞いて感激しました、小説では河原での音でした」
その方は、今日の日が「一種の再会」だったと感動されたとのことでした。
終了後には、希望者が明石ハウス近くの穂蓼八幡神社(大蔵八幡)の境内で、実際にの音に聞き入りました。講演で紹介されたエンマコオロギとカネタタキの音も聞くことができました。
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地域研究センターでは、地域研究・社会貢献の一環として『大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ』を継続的に行っています。
次回は11月19日(水)午後6時から、人文学部の曽我部愛准教授による講演「中世の巌島参詣と瀬戸内海交通―平氏一門の巌島信仰を中心に―」を実施する予定です。ふるってご参加ください(予約、事前申し込み不要)。
写真:矢嶋 巌
文責:金 益見