Vol.41(2021年9月)
藏薗 和也
音楽、映画などを通じて英語に興味
定型表現の一つであるコロケーションを研究
小さいころから英語に触れてきた藏薗先生。
「英語らしい表現とは何か」との疑問から定型表現の研究へ。
そしていまコロケーションの研究に力を入れています。
聞き慣れないコロケーションについて分かりやすく説明してもらいました。
英語表現への興味から大学院へ
幼い頃から英語の歌を聴いたり、洋画や海外ドラマを観るのが好きでした。「May the force be with you.」(スター・ウォーズのセリフ)などもよく口にしていて、名画の決め台詞から英語を学んでいました。高校時代に海外留学生と交流したことがきっかけで、大学では海外語学研修でオーストラリアのパースへ行き、英語と文化について学びました。また多くの国の学生たちと一緒に遊んだこともあり、外国人に対して、異質感よりも同じ人間同士の親近感がわいたものです。
その頃から、「海外ドラマのセリフや小説、そして歌の歌詞などに込められた思いをどのように理解すればよいか」「どうすれば自分の意見を上手く話せるようになるか」「英語らしい表現とはなにか」という疑問をもつようになりました。それが、言葉に興味をもつようになったきっかけです。
もともと教職志望でしたが、大学4年間はレスリングの部活に励んでいたので、もう少し勉強した方がいいだろうと考えて大学院に進学し、そこで英語の語法について勉強しました。
聞き慣れない、コロケーションとは?
私は現在、英語の定型表現について研究しています。定型表現とは、ことわざやイディオム、コロケーションなど英語非母語話者の発想とは異なることが多い英語らしい表現のことであり、そのために外国語学習の際に、学習者が躓く要因の一つともいわれています。
定型表現の中でもとくに力を入れているのがコロケーションです。中学・高校の英語の授業では馴染みのない言葉かも知れませんが、とても重要なものです。コロケーションとは、「よく一緒に使われる単語の組み合わせ」のことであり、「連語」と和訳されます。ネイティブスピーカーは、よく一緒に使われる単語の組み合わせを読んだり聞いたりすると、とてもナチュラルに感じます。一方、文法的には間違っていないはずの単語の組み合わせでも、あまり一緒に使われない組み合わせだと違和感があります。
ナチュラルに感じる組み合わせの例
分かりやすくするため、日本語の連語(表1参照)の例から紹介しましょう。
例えば、犬は吠え、鳥はさえずります。
つまり、「犬」と「吠える」、「鳥」と「さえずる」は連語であり、日本人にとっては自然な表現になります。
同じように「囲碁」と「打つ」、「将棋」と「指す」も連語ですね。
外国人が日本語を学ぶときに、悩むのはこうした表現でしょう。
コロケーション(表2参照)の場合も連語と同じです。馴染みの「ファストフード」。
迅速に注文品が出てくるなら「quick food」でも良さそうですが、「fast food」と表現します。
「強い雨」の場合は、「strong rain」ではなく、「heavy rain」です。
「風邪を引く」場合は、「pull a cold」ではなく、「catch a cold」です。
連語とコロケーションの両方を比べてみると、分かりやすくなったのではないでしょうか。
言葉を選ぶ法則を研究し、人間らしさを探りたい
「さえずる」「吠える」「rain」「cold」といった単語はそれぞれ何とくっつくか、それを選ぶために基準があり、私たちは無意識に選んでいます。
でもそれはある法則に従って言葉を選んでいます。このコロケーションは国や文化によって違います。
言葉を選ぶときの法則を研究して、目に見える形で示せるのかに興味がありました。どちらを選ぶか、その理由が分かる方がただ暗記するだけよりも興味がわいてくるはずです。
言葉は他でもない人間が作り出したものなので、人間らしさが出るなと思います。
例えばイラストレーションがイラストに、携帯電話がケータイに短縮されることがあります。
なぜ短縮されるかと考えたとき、長くて言いにくい言葉を繰り返すのは聞く方も嫌になります。話す方もラクしたいという気持ちになります。
つまり労力を省いて効率的にやろうという、言語学で「経済性」と呼ばれる原理がそこには働いているわけですね。
今の目標は、ネイティブの思考は外国語学習者にとって分かりにくいことも多いけれど、その法則を分かりやすく伝えていきたい。
そこには人間らしい考え方や営みがあるということに興味をもってもらえればと思っています。
音楽でも映画でも好きなことに没頭
英語学に興味をもつ学生へのアドバイスとしては、自分がおもしろいと思えることを実際に英語でやってみることですね。
それが英語を勉強するきっかけになると思います。私の場合は音楽が好きで、大学のときは好きな曲の英語の歌詞カードを見ながら繰り返して発音しました。覚えてしまうくらいやりました。
皆さんも好きな音楽でもいいし、あるいは好きな映画を教材に何度も見て勉強するのもいいでしょう。
没頭できるものを探して、そこから英語を学べばいいと思います。
取材・文/三島彩伽・多田理子
藏薗 和也
2009年 関西学院大学文学部卒
2016年 関西学院大学大学院博士課程単位取得満期退学
2020年 神戸学院大学人文学部講師