人文学部の新居田久美子講師が新著『産学連携における大学初年次キャリア教育―地元企業交流を通した自尊感情の醸成―』(神戸学院大学出版会、2024年)を出版しました

新居田講師はキャリア教育・社会心理学を専門とし、2017年に本学に赴任しました。人文学部では主にキャリア教育に関する科目を担当しています。
 
新著は人文学部1年次生向け科目「基礎演習」での教育実践を紹介しつつ、学術的観点から分析を加え、世界的なキャリア教育の潮流に位置づけようとしたもので、人文学部における教育活動が学術的探究と不可分の関係にあることをよくあらわしています。
 
タイトルにも「産学連携」「地元企業交流」とあるように、新居田講師の担当する「基礎演習」では、学生が兵庫県内にある企業の「持続可能な社会の実現」に向けた取り組みを調査し、実際に相手先に出向いてインタビューを行った上でレポートにまとめ、ゼミ内での発表を経て、最終的には調査先企業を招いた学習成果発表会を実施するという、意欲的な取り組みを行っています。
授業で訪問した企業は、株式会社 イーエスプランニング、株式会社 いづよね、株式会社 鍵庄、株式会社 神戸サンソ、株式会社 ネクストページ、株式会社 フナビキ工務店、株式会社 ブレストの7社(50音順)で、書籍のなかには学生たちが作成したレポートも掲載されています。(本学が産学連携協定を結ぶ兵庫県中小企業家同友会の会員企業と本学社会連携グループの協力を得て、本演習が実現しました。)
 
新型コロナウィルスの流行がやまない2022年度後期の授業であったため、実施にはさまざまな困難があったようですが、グループワークを中心とするアクティブラーニングによって、学生たちは「個人の力だけでは成し得ない集団の知恵の活用や、励まし合いの相乗効果に気づいてくれた」ようです(本書87ページ)。
また「普段は、消費者の目線でしか、ほとんど見ていなかった業種について、生産者の目線になってモノや技術やサービスを提供していく姿を目にしたことは、就職活動というよりも、さまざまな人生の在り方を理解し、『生きる』ことの視点が広が」る経験につながった、とも新居田講師は分析しています(同上)。
 
人文学部は、産学連携やキャリア形成といった話題からは縁遠い学部だと思われがちですが、決してそんなことはありません。
人文学部には新居田講師のようなキャリア教育に関する専門家が在籍し、「これからの社会のなかで求められるのはどのような資質・能力か」「大学生活での学びをどのようにしてキャリア設計に結びつけてゆくか」といった見地から研究と教育的実践を行っています。
今回の新著はそのような研究・実践の充実した成果です。ひとりでも多くの方に手に取っていただければと思います。

 

 

【目次】

  • はじめに
  • 第1章 キャリア教育と近接する専門領域
  • 第2章 大学教育におけるキャリア教育
  • 第3章 学習成果
  • 第4章 評価
  • 第5章 AI時代の大学初年次キャリア教育に期待されるもの
  • 第6章 社会から必要とされる人材とは
  • 第7章 産学連携が果たす役割
  • おわりに

A5判 200ページ 定価 2,000円+税 ISBN978-4-89985-233-9