2021年9月号

車が好きでカーディーラーの世界へ。
今の目標は信頼される存在になること。

豪華なイタリアの高級車が並ぶショールームでレセプション担当として活躍する児玉聡子さん。
2021年3月にここに転職する前は、国産車ディーラーの営業職でした。
車が好きでこの世界に入った彼女にじっくりと話を伺いました。

取材/野間敬一朗・藤村玲玖・高崎裕葵、取材/野間敬一朗

 

Profile

1996年神戸市生まれ。明石清水高校出身。大学在学中に普通免許(MT)と大型二輪免許を取得。卒業後、国産車のカーディーラーで営業スタッフとして活躍。2021年3月、今の輸入車ディーラーに転職し、受付事務を担当。

 

購入した車の担当者さんに憧れて

神戸市西区の玉津インターチェンジ近くにある「アルファロメオ神戸西・フィアット/アバルト神戸西」は、店名の通りお洒落で個性的なイタリア車を専門に扱うカーディーラーである。一歩足を踏み入れるだけで気持ちがワクワクする。

出迎えてくれた児玉聡子さんは、ここでレセプション担当として、受付・接客・事務などで活躍している。

彼女がカーディーラー業界を目指した理由から伺った。
「もともと車が好きで、大学のときに買った車のディーラー担当者がすごくいい人でした。お父さんのときからずっとお付き合いのある方で、とてもよくしてもらい、それがきっかけで、こんな仕事に就きたいなと。その人みたいに頼られる営業職になりたいなと思っていました」
聞けば、普通免許と大型二輪免許を持っていて、大学時代から乗り回していたそうだ。しかし、大型バイクとはスゴイ!
「そうですね。面接のときに、なんで大型二輪を取ったの?と必ず聞かれました。ルパン三世の峰不二子ちゃんに憧れて、ハーレーに乗ってみたかったからと答えたら、そこから雰囲気が和み、柔らかい話になりました」

そして卒業後、入社したのは国産車のカーディーラーであり、念願通り営業職として活躍した。

受付で仕事中の児玉さん

写真バイクは中型。ツーリングを楽しむ

 

お客様を確実に増やすが不満も‥

カーディーラーの仕事は、「営業という目線でいえば、お客様に車を売るのがメインですが、広い意味では、車についてくる保険、点検、車検なども含めてお客様のカーライフをサポートすることです」と児玉さん。
約3年間で児玉さんに付いてくれる顧客の数はずいぶんと増えた。顧客と仲良くなり、一緒に食事に行くこともあったという。
こちらのどんな質問にも丁寧で誠実に答えを返してくれる児玉さんの様子をみていると、児玉ファンが増えたことは容易に想像できる。
好きな仕事であり充実していたが、少しずつ不満も溜まってきた。
カーディーラーの営業職は、圧倒的に男性が多い職場だった。年齢もほとんどが年上である。どんなに頑張っても、「女の子だから頼りない」「女の子だから車の知識がない」とか言われると少し腹が立つ。「女性だから車の運転が下手」みたいなことも言われた。今でいうジェンダーギャップである。そこで思い切って今の会社に転職した。

 

頼りにされる仕事をしたいと転職を決意

営業からレセプションということで、戸惑いはなかったのだろうか。
「ほとんどありません。前の会社でも、営業以外の受付、事務、駐車誘導などの仕事もしていましたから。パソコン操作をはじめ、年配の人からいろいろ頼られました。事務員さんが休んでいたら、私が事務の仕事をやっていて、けっこうパンク状況でした」
もともと頼りにされる仕事をしたいと考えていた。だったらサポート業務のほうがいいかも、という気持ちに傾いた。それも転職の理由だった。
「もちろん私を指名してお客様に来ていただけるのも嬉しかったし、自分が売った車に乗ってもらえるのも嬉しかった。でもそれよりも、サポートする側になった方がいい」と考えて転職を決断した。

私たちのために飲み物を出していただき、感謝です


いま乗っている日産エクストレイルと

個性的で遊び心のあるイタリア車の魅力

ショールームに並んでいるフィアット、アバルトはイタリアを代表するコンパクトカー、アルファロメオはスポーツ性の高い高級車として知られている。
実は、輸入車の8割はドイツ車であり、イタリア車は2割ほどだ。八光自動車工業が少数派のイタリア車を扱い始めたのは、会社のトップがイタリア車の個性と遊び心に惚れたからであり、その後、会社は着実に業績を伸ばしてきた。
当然ながらここの来店客は富裕層だと思われる。それだけに児玉さんも接客に気を使うのではないか?
「イタリア車と同じで、お客様も遊び心のある個性的な人が多くて、お話をしていても楽しいですよ」
児玉さんによれば、国産車やドイツ車は価格とグレードで選ばれる傾向にあるが、イタリア車は一つひとつに個性があり、デザインや性能など、顧客のテイストによって選ばれる傾向にあるという。
顧客との会話が楽しい訳も分かった気がする。
「まだ入社して間もないので、一つひとつの車についての知識が不足しており、お客様と込み入った会話ができないのが歯がゆいです。もっと頑張って覚えないといけませんね。でも車好きなお客様と車の話をすることができるのは楽しいし、やりがいもあります」
営業職時代は、担当顧客に気を配るだけでよかったが、レセプション担当だと、来店客すべてに気を配る必要がある。まずは、頑張って顧客の顔と名前を覚えるようにしているそうだ。
そして、「ここで一番頼ってもらえる存在になりたい。児玉さんに聞いたら分かると言っていただけるようにね」と笑う。

左から高崎くん、野間くん、藤村くん、児玉さん

ミッションの普通免許が必須

カーディーラーを目指す学生に、在学中に取得しておいた方がいい資格は?との問いに、次のように答えてくれた。
「私自身、取っておいて良かったと思う資格は、ミッションの普通自動車と、面接などで必ず聞かれた大型自動二輪ですね。自動二輪の話は先ほどしましたよね。普通自動車はなぜオートマではなく、ミッションかといえば、仕事のなかでお客様の車を動かすことがあるからです。お客様がミッション車で、自分がオートマだったらお客様の車を動かせません。だからディーラーではミッションが必須です」
なるほど、納得。実は児玉さんは、かねてより中型免許と牽引車の免許も取ろうと考えていたそうだが、コロナ禍で運転免許試験場が閉鎖されたため、いまだに願いが叶っていない。だが、コロナが収束すれば、いつかチャレンジしたいと意欲を燃やしている。どこまでも前向きな人である。